処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー 薫るは甘き恋模様

おとボク2アンソロの5巻目。表紙絵的に薫子さんメインの巻だというのは検討がつきますが、既刊に同じ主旨のがあったような気がするんですが、著者買えということでし切り直しなんですかね。当然ながら作者が変わったことで作風はまた一味違ってきます。おとボク2の舞台であるミッション系のお嬢様学園色を前面に押し出して、テキストはややお上品な仕上がり。更に元来はキリスト教文化圏イベントであるクリスマスやバレンタインを大きく取り上げ、それらのウンチクでデコレートすることでよりハイソ感が高められている。今までのアンソロ既刊はキャラとかシチュ萌えが売りだったんですが、今回はそれと比べると読ませる作りになっている。

そういうわけで薫子&千早メインというかほぼそれしか無いわけですが。やたらめったら薫子さんが可愛かったり微笑ましかったりしまくりです。本編では薫子さんはアンマリ自発的に行動しなかったんで、ここぞという時には暴れるけれども、自分からはあまり何かしようということが少な目でした。役柄上致し方なしという所もあるんですが、おとボクはキャラの成長が一つのキーワードになっているんで、強気系キャラなのに消極的てのはちと消化不良な点でもありました。そこんところを上手い事吸い上げてアンソロにまとめたのは妙手でありましょう。

薫子さんのウィークポイントと強みが丹念に描かれるのがこの巻の魅力ですが、もう一つの見所は千早さんでしょう。アンソロなんかの派生作品では千早さんのダーティさやワイルドさや意地悪な側面がとかくクローズアップされがちではあるんですが、今回は神々しく慈悲に溢れたお姿を見せている。薫子さんが自分から何かしたいと言い出せば無論のこと千早がフォローに回るのは自然な姿ですが、そのバックアップが尋常じゃなく母性豊かといいますか。凄まじい人間力の高さにビックリですよ。時系列が大分後半なんでクッソ汚い千早さんの暗黒面は薄くて当然でもありますが、違和感が拭えないこともない。いや、これはこれでアリだと思いますけどね。しかし母性の匂い漂わせる男の娘とは……

なんだかんだいって主要キャラにもそれぞれちょびっとずつ出番があるのもポイント高いです。ポジションが近い香織理さんのジョークが冴え渡っておりました。

処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー 薫るは甘き恋模様 (まるち文庫 8)

処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー 薫るは甘き恋模様 (まるち文庫 8)