THE IDOLM@STER 1

アイドルマスター通称アニマスの公式コミカライズ。アニメ本編では本文中の表現で言うところの「台風ライブ」直後からの、アニメ本編では描ききれなかったアイドルたちの様子が描かれている。ここは765プロダクションが大きく飛躍を遂げるターニングポイントとなるところなので、まさに黄金時代の躍動的な彼女たちが非常に魅力的である。一躍有名人になったことに戸惑ったりいつも通り穴を掘ったてみたり。激増したお仕事に精一杯打ち込んだり苦悩してみたり……あるいは惜しげもなく才能を開花させる者もいたり。アニメ本編が正攻法で面白かっただけに、側面から再度良さを捉えなおそうとする試みは、ファンとしてはかなり有り難い。基本的にはファン向けの作りなので、アニマス未視聴の方がこのマンガを読んで楽しめるかはやや疑問符がついてしまうが、コレが視聴する切欠になれば幸い、といったところでしょう。

表紙からも分かるとおり、この巻は春香・美希・響をクローズアップしている。アニマスでの春香さんの謎帽子に謎メガネの変装テクニックがどのように生まれたかは、衝撃的である。リボンか……やはり、リボンなのか……ここのシーンは特に象徴的で、読み終わってしまえば成る程と自然に納得してしまうほど、ああきっとこのキャラなら本編の見えないところでこういう振る舞いをしていただろうな、というスッキリしたものがある。セリフであるとか表情であるとか、凝ったものはは一見すると見えない。見えないのだが、それはつまり作り手側が自然であるような絵にしよう、という努力の現われなのだろう。

俺は春香さん推しなのでもう少しそのことについて書いてしまうが、13人のリーダーの位置付けであることが明確に押し出されているのに涙ちょちょ切れである。総合的な能力であれば美希の方が(現時点では)格上、歌唱力は千早、エッジの利いた強さではやよいや亜美真美の天性の明るさなどある一点においては負けている。没個性と言われてもある意味仕方ないのであるが、しかし微妙な局面においては何故か春香さんがリーダーシップを取り、周囲もそれをナチュラルに受け入れている。特に理由も無しに。そういうアニメなんだと言われればそれでオシマイなのだが、人を惹きつける魅力こそがアイドルの資質であり、それを無条件に発揮している春香さんは、やはり眩い存在なのである。


このマンガは別に春香さん本ではない。驚くべきことに、この一巻だけで13人全員にきちんと大なり小なり見せ場がある。もちろん先に書いた三人が主体なのだが、このバランスは中々に驚異的である。千早のあざとすぎるツインテール、春香・美希の通称正妻戦争、いおりんの繊細さを伺わせるありがたいお言葉、あざささんの抱擁、りっちゃんの場をキッチリしめる女房役的言動、貴音のどこかズレて浮世離れしていくミステリアスさ、そして小鳥さんの意味深な挙動不審。まさに属性の違う分だけ注文ポイントも異なるではあろうが、個々のページではかなり多様なニーズを受容しつつ、だからといって過激な方向にはいかず、本全体としてはあくまでシンプルに収まっているのが、本当に素晴らしい。

THE IDOLM@STER 1 (REXコミックス)

THE IDOLM@STER 1 (REXコミックス)