花と星 (2)

全俺が待望した第二巻にして最終巻。読む前にはもう終わってしまうのか、という心惜しさが大きかった。だが、読み終わってからの爽快な気持ちは半端ではなかった。こういう波乱万丈で紆余曲折あったけれども皆ハッピー大団円でサクッと完結するソフト百合が読みたかったのだと、認識を深めるのであった。

前巻の終わり方が終わり方だっただけに、いやホントこれ欝エンドな方向に突っ走ったらどうしたもんでしょう、とヤキモキしておりました。だが杞憂に終わった。花井さんが振り回されまくって、星野さんが意識し過ぎて逆に無意識に引っ掻き回しまくって、実は最も常識人であった船見先輩が細やかな気配りが出来る故に一手に損を引き受けてしまったり。先輩かわいそうです。でも、先輩が身を投げ出す覚悟があったからこそのゴールなんですよねぇ。

ガールズラブなので女性同士というややシビアな話題なのだけど、花井さんが色々と青春初心者すぎて空転しまくりで激烈にシリアス過ぎないのがとても良いです。これはマンガとしてテンポが良くなって読みやすくなるという利点でもある。ハラハラしつつもドキドキさせ、ページを捲る手を止めさせない。コミカルさ具合では星野さんもどっこいどっこいなんですけれども。星野さんは言動と表情のギャップが大変なことになっているお方なので、花井さんはイチイチそれにブン回されるわけで。突然の修羅場チックかと思いきや、おいちょっと待てよと肩の力を抜けさせる展開を交互に繰り返すことで、物語は少しずつ、しかし確実に進行していく。このバランス感覚は巧みといって良いでしょう。

各キャラクターの造形も見事なんですよね。この巻では回想の形で、先輩と星野さん、星野さんと花井さんがそれぞれ接点があり、そのことが後々までに影響を引くということが描かれている。それぞれのキャラは唐突に見える行動を取り捲りなんですが、それには原点がちゃんとある。先輩はなぜ星野さんをハルちゃんと呼ぶのか、星野さんはなぜ花井さんにトラウマを植え付ける程の卓球をするようになったのか、でもサックリ卓球辞めてしまったのとか、花井さんはなぜに暴走特急キャラなのかとか。花井さんは星野さんのことなど全く覚えておらず、星野さんは花井さんの存在があったからこそ決意をすることになり、船見先輩は星野さんと離れ離れになっても忘れられずに秘め過ぎた思いが一気に噴出することになり。そうした過去の邂逅が、現在の出会いと繋がっていく。象徴的なのは、卓球がそれぞれの別れになるのだけど、最後には二人を結びつける手がかりとなる。これは最高ですよいやマジで。

絵柄も内容に程よくマッチしております。心理描写と表情の動き、比較的動きの少ない星野さんと、躍動感溢れる花井さん。それに、ミステリアスだけれども高い包容力の顔も併せ持つ船見先輩。シャープだけれども丹念な描き込みには恐れ入る限りです。

彼女たちはこれから激アマな百合生活を満喫していくかと思われますが、これ以上の物語は綴られないことが残念に感じてまうほどに素晴らしいマンガでした。

花と星 (2) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)

花と星 (2) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)