処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー

1が出た頃はいろんな意味でセンセーショナルを巻き起こした、おとボクの2です。露骨にマリみてをパクリにいったエロゲ(非公式ながらも公然の事実ってヤツ)だったわけですが、いまや女装主人公・ソフトな百合で純愛路線の属性を確立した功績と歴史的意義は非常に大きかったでしょう。その続編に当たる 2 なわけで当然いろんな意味で期待は高かったわけです。

……と書くと、なんだか期待はずれに終わったような書き口ですが。実際、ちょっと期待外れで終わった感はある。総合的に見れば充分に良作なのだが、期待が大きかっただけに少し肩透かしを食らった。その原因はなんとなくしか整理できていないんだけど、キレイにまとまりすぎてるからでは、と考えている。キャラの構築はしっかりしてるし、シナリオも分かりやすくストレートな展開にまとめられているし、要所要所のエロゲ的な笑いの要素も入れていて飽きが来ない。が、諸々の要素が優等生過ぎるが故に、1のような尖がった作品になれなかったように思う。まぁこれはおとボクに限らず、シリーズ化した作品がどれしも抱える構造的な問題なのだけれども……

世界観を引き継ぐということは、ユーザは前作の雰囲気をもう一度楽しめることを期待する。しかし、あまりにその点についてユーザーフレンドリすぎると、その作品単体としての評価がビミョウなものになってしまう。私的には、本作品の1の焼き直しのようなシナリオは非常に楽しめた。ただ、2ならではの要素をもう少し前面に押し出したものが見たかった、というのもまた本音である。

とまぁ色々書いてしまいましたが、いやもう、1とエトワールのファンとしてはホント感無量なシーン多くて大変でしたよ? 書き出したら、たぶんきりが無い。

まずは、なんつっても茉清さん&聖さんペア。いやもう、なんていうかね、あの孤高を良しとする茉清さんが少しずつトロトロにされていく様は筆舌に尽くしがたい感情が押し寄せましたね。聖さんの名前読めねぇとか最初の章の方で言っていた俺を過去にさかのぼってどうにかしたい。だって、サブキャラというかモブキャラのひとりとして終わるもんだと考えていたキャラが素晴らしいシチュエーション持ってくるなんて想像だにしなかったわけで。おまけシナリオはあざと過ぎて、シナリオライターのサービス精神に感動してしまいました。

サブキャラ枠でいうと、初音さん&優雨ペアもまた侮りがたし。エトワールから通してみると初音さん成長しまくりでホント泣けてくる。病弱気弱キャラだったのは最早昔のこと。やさしくパワフルに生徒会長の役をこなすのは様になってました。ただ、おかげでヒスキャラポジションの沙世子さんの影が薄まってしまったのだけど……善良属性のキャラばかりの本作では致し方なし。初音さんの「おかあさんみたいと言われるのが怖い」という謎の名台詞がアタマの隅に残って仕方ないので、個別ルート欲しかったところです。

で、初音さんを語る上で外せないのが優雨というキャラクター。超病弱キャラに過去同じように病弱だった自分を重ねてしまい色々気苦労してしまう、という構図だけ見ればよくあるパターン。しかし、優雨が実は確固とした人格を持ち合わせている、という描写があるおかげで事情はかなり変わってくる。思い通りに動かない身体というコンプレックスは両者に共通するものであるが、だからこそ優雨の真実の姿に中々気付けない初音お姉さん。初音さんが実は優雨を見ていないことを、初音本人以上に鋭く察知できる器量が優雨にはある。しかし、それを伝達するだけの経験と技術が優雨に無い。そのギャップを埋めることに奔走するのが、オイシイところを常に持っていく主人公の役目になるのだけど。優雨の個別シナリオもちょっと見てみたかったです。コレはネタばれですが、おまけシナリオで優雨と陽向がエロスとパッションについて詰めるシーンがあります。あれをもちょっと深く掘るイメージ。優雨の持つ独特な世界を見通す眼力をイロイロと小技に長ける千早さんが引き出していく、みたいな。

サブキャラクター陣は本当に魅力的なんですよね。陽向が香織理さんをしっちゃかめっちゃに掻き回しつつ、その実前へ進む切欠になぜかなっちゃってるところとか。香織理さんはオトナキャラを決め込んでる素振りをしてる癖に、他人にはいじわるをしょっちゅうしかける子供っぽさもある強烈なお人。なので、というか、なにが「なので」なのかサッパリ分かりませんが、香織理さんと陽向という組合せは相性すごい良かったんですよね。二人とも本音を建前で覆いつつ会話してるにもかかわらず、きちんと本音の部分は通じていてツーカーという。そりゃこんなのがいたら香織理さんもプリマヴェーラを気取ってなんかはいられませんよね。香織理さんの子供っぽさをすごい遠まわしに主人公が矯正していくシーンがあるんですが、やや厭世気分気味の香織理さんを思いっきり横殴りする形になる。あの辺はホントよくできてるとしか……あれを機に少しずつ香織理さんもやわらかーくなっていくのとかね。一皮向けば慈愛キャラだったという恐ろしさ。

その中で異彩を放つのがケイリと賽。おとボクは、キャラの成長っぷりをたのしむのが一つの勘所なんですが、アンマリ変わらないのがこの二人。ケイリは最初から最後まで不思議つーか星の皇女を貫いちゃったし。さすがにラストはケイリと賽も変わらざるを得ないクライマックスが用意されていますが、本質的なところはさほど変わらない。でも、ケイリの蠱惑的なシーンは良かったけど、肝心のシナリオがちょっと……まぁケイリのシナリオに限らず、全般的にシナリオが最初と中盤はいいんだけどクロージングがちょっと……という感じだったんだけど……

正直なところ印象に残ってるのって薫子さんシナリオだけなんですよね。しかも、あからさまに前作の紫苑さんと貴子さんシナリオの焼き直しだし…… 救出+大立ち回りなとことか、そのまんまだし。いやでもね、ストレートに王道でおとボクワールドを表現している良いシナリオなんですよ。けど、あまりにも 1を前提とし過ぎているところがどうにも……タンピンでみればすごく良く出来てるんですよ。出来てるからこそ、モヤッと残念に思えてしまってですねぇ……

でまぁ、主役クラスの千早さま&薫子さんですが。薫子さんはその出生からトゲトゲしいキャラにならざるを得なかったわけですが、エトワールで姉や寮の仲間に恵まれ、ずいぶんと大人しいキャラに成長を見せます。そして千早という核弾頭を迎えることで完成を見るわけですね。エルダーを二人にする意味は何だったのか良くわかりませんでしたが、この二人はおとボク2を象徴するナイスカップルだと思いました。

最後は千早さまの話になるわけですが……本当にいやらしいというか汚らわしいキャラを作ったものだよなーという感想しか出てこない。鬼畜とかそーゆーわかりやすいえぐさはさすがに無いんだけど、千早さまの冷め切った態度は本当にひどい。しかも分かりやすく他人に攻撃的かというとそうではなく、他人にも自身にも興味が無いからこそ、パーフェクトに女装が決まるというすさまじい皮肉ぶり。あまりにも完璧に女性を演じるからこそ、疑り深い香織理さんや真実の眼を持つ優目には見抜かれてしまうのは愛嬌ですが。ある種の諦観を持ってしまったが故に人格としては終わったけど、代わりに卓越した能力を得る、ていうのは……やっぱり、ヒドイ話だなぁと悲しくなるわけです。でまぁ、その絶対零度に冷却された千早さまの心根が、聖應の少女たちによって少しずつ溶かされていくのをニヨニヨしながら楽しむのがおとボク2の肝であるんですけどね。

というわけで総評は、キャラクターは一級品だがシナリオがその素材のよさを活かしきれていない、となる。エロゲとしては大変に良作。ただ……やっぱり期待値高かったからなぁ。キャラの造形はすごい良かったんで、もうちょっとシナリオで捻ってくれれば最高だったのにな、というところです。

処女はお姉さまに恋してる 2人のエルダー 初回限定版

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