11eyes-罪と罰と贖いの少女-

厨二病要素が色々と炸裂する能力者バトルプラス学園モノなジュブナイル系なエロゲ。超能力や身体強化、聖書や陰陽道をベースにした能力者の戦闘要素が主成分。熱さだけでいえばさすがにニトロプラスの作品ほどには及ばない。しかし、ニトロのような重厚さがない分だけ、あまり頭を使わずに読める軽量さはこの作品の長所でしょう。

この作品を特徴付けているのは、何はともあれ陰陽師で女剣士の美鈴先輩の戦闘シーンでしょう。詠唱や召還の台詞回しがとにかくカッコイイ。もちろん、厨二病的なかっこよさなので、わからない人にはわからないだろうけど。キリッとしてる怜悧な先輩キャラが赤髪でクールな言動で刀振り回すのは、近年のエロゲとしてはある種の様式美といっていいでしょう。そしてお嬢様設定なのも自明の理であり、世間知らずを爆裂させて周囲をずっこけさせたり、お調子者ポジションの賢久にからかわれれて爆発したりするのは自然なことである。

個人的に気に入ってるのは雪子です。きゃぴるーんできゅるるーんなののは外装であると同時に精神を保つための盾である、というのにやられた。あれの元ネタってどうみてもユーゴスラビア紛争ですよねぇ。本編では雪子はその出自から同情されるのを嫌っていましたが、エロゲのプレイ側としては、ああいうキャラは中々にそそるというか泣けるというか。

でまぁ、雪子を語る上で欠かせないのが賢久でもあるんですが……なんていうか死亡フラグ満載した結果がこの様といいますか。あまりにも悲惨すぎる末路が余計に感情移入を加速させる。雪子がかわいそうってのはもちろんだけど、賢久も同じくらい哀れというか……色々とあんまり過ぎである。

サブのヒロインたちの戦闘力が高いとメインヒロインは割を食って目立たなくなりがちですが、本作も負けず劣らずゆかの影がやや薄い。ゆか最大の見せ場は、独占欲と無力感の肥大化の結果、秘められた能力の覚醒と相まって、あわやえい○んのせかいエンド、な場面。この作品では、たぶん唯一のネガティブ思考キャラなんですよね。設定とか生い立ちが不幸や悲惨なのはタクサンいるけど、高まりすぎた好意が悪意に転換してしまうのは彼女だけ。サブヒロインが異能力で突出した分、カウンターとしてドロドロな人間臭さをモロに出す役割を担わされた、ってとこですかねぇ。

シナリオそのものは実はシンプル。駆君が悪の魔女をブチのめすという英雄譚。主人公が最初は若干欝っぽいものの、色々な人に出会うことで精神的に成長し、その過程で異能力に覚醒してラスボスを打ち倒してハッピーエンド。バックグラウンドには千年越しの壮大な物語が織り込まれてはいますが、シナリオに深みを持たせるための味付けに近いイメージ。ラスボスが必ずしも絶対的な悪と言えない点はあり、救済イベントが無かったのがやや不満ではありますが、英雄譚として成立させるには中途半端に蘇っちゃったりするより、素直に倒された方が収まりは良くなる。ので、総合的に見ればシナリオには満足しています。……でもまぁ、ねーさんがちゃぶ台ひっくりかえしちゃうんだけどさw

あとは選択肢が多いのがちょっと面倒だった。基本は二択で死ぬか続行かだからそこまで面倒でもないんだけど……あと、ヒロインごとにシナリオの変化がほぼ無いのもちょっとマイナス点。ほぼ無しな一本道なら、せめて選択肢の負荷を軽減してほしかったところです。

細かい点にいくつか不満はあるものの、肝心のキャラやシナリオは良く出来ているので充分に楽しめました。

11eyes-罪と罰と贖いの少女-

11eyes-罪と罰と贖いの少女-