問題児たちが異世界から来るそうですよ?YES! ウサギが呼びました!

ここのところラノベ界隈はやたらタイトルを長くして釣るという手法が浸透しつつありますが、中身がついていってないと残念に見えてしまうのが人情というもの。そんな中でも一際異物っぽさ抜群のこの本。書名といい表紙絵のあざとさといい、素晴らしい巻き餌の仕方につい食いついてしまいました。しかし、タイトル一本釣りとはこのようにやるのだと言わんばかりに内容がしっかりラノベしてる。内容はかなりシンプルで、チートスキル持ちの主人公たちが異世界に召還されて傍若無人の最強っぷりで色々なものを粉砕していくもの。いやほんと、異世界召還最強モノとしてホント良くできてます。

なんといっても主人公の十六夜の性能が本当にぶっ壊れてまして。超絶脳筋な壊れキャラだけど頭脳派な一面もあり快楽主義者(自称)で黒ウサギとの漫才も板についており普段の態度はツンツンですが仲間思いっぽくもありと相当に終わっている。彼は本当に好き放題暴れまくりなわけですが、描写がアッサリしているせいか、この手合いにありがちなクドさが無くとても読みやすい。十六夜女性案もあったようですが、これは男性で正解だったんじゃないかなぁ。主要キャラ全員女性にして百合百合しくするもそれはそれで見たかった気もするけど、余計な事言って黒ウサギにハリセンでどつかれるの見てるとこれはこれで良かったんじゃないかと思います。

異世界に召還されたのは三名おり、十六夜以外の耀と飛鳥もやはりチートキャラ。彼らは現実世界では余りにも突き抜けた異質な力を持つが故に、それぞれに葛藤やコンプレックスを抱えている背景事情があります。だからこそ、それが発揮できる場に呼ばれてしまったのですが、三者とも思惑が一致してるようなしてないような所もまたこの作品の魅力です。耀は抑圧せざるを得なかった能力を100%発揮しての活躍が期待できるし一巻でも十二分に見せ場がありました。飛鳥もその辺りの事情は同じなんですが、異世界に召還されたことでルールがひっくり返って自分の持つスキルは実は開発の余地があることに気が付かされて決意を新たにする、ってところに留まってるのが対称的です。いや、飛鳥もフツウにカッコいいシーンがあるんだけどSDキャラの謎自虐のせいでどうにも……

三人とも日本人なんですがどうやら呼び出された時代がそれぞれ異なるらしいことが作中でほのめかされています。無難に過去・現在・未来で、それぞれ飛鳥・十六夜・耀かなぁとなんとなく推測してみたり。飛鳥は戦後がどうのって言ってるくらいだから過去確定かなぁと言う匂いがそこはかとなく漂ってるし、彼女自身が「これから」というテーマ性を持ったキャラでもありますし。色々と深読みするのもアリですが、一巻単独での完成度が高く読み切りやすいのも評価ポイントです。

ギフトカードからの阿吽の呼吸三連ツッコミで笑わせてもらったりと楽しみ所満載の一冊でした。