マンホール 1
1-3巻で完結。
日本のとある地方都市、マンホールから這い出てきたと思しき人物が不審な死を遂げたところから物語は始まる。当初は薬物中毒などにより狂人の奇行だろうと片付けられるかと思いきや、その人物には妙な病原菌が潜んでいることが判明する。しかし、症状こそ恐ろしいものの様々な要因から感染が拡大するまでには至らないと分析されるが、街では少しずつ不吉な影がよぎりはじめていた……
てな感じのバイオでホラーなアウトブレイクのマンガ。連載がヤングガンガンだからか、街ごと気化爆弾で吹き飛ばせばいいんじゃないのみたいなハリウッドアクションほど派手なことにはなったりしないし、ゾンビ化して人を襲い出して一息に病気とパニックが伝染するとかいったこともない。いつもは日常に隠れ潜んでいるけれど、何かの拍子に漏れ出て悪意を撒き散らす、という類のホラーですね。
そういうわけでギミックは小道具に近いのだけど、これらは恐ろし要素の演出に上手く機能している。題名でもあるマンホールは、日本人ならどこでだった毎日目にするものであり、ありふれたものだからこそ非日常へのご招待口となるところにおぞましさがある。他にも寄生虫やらワクチンのウンチクやらなんやら色々あるのだが、個人的に気に入っているのは媒介昆虫の使い方。冬だから対象の昆虫の動きは鈍るし、卵のままだから成体になることは稀なんで、被害は限定的でしょう科学的に考えて、とかなんとか言ってたらえらいこっちゃになっちゃった、という流れのあたりがね。バカな……早すぎる……といいますかなんといいまsか。
パニックのアクションは主眼でなくどちらかというと人物描写がメインなこのマンガ。事件解決にあたる刑事二人組みがなんつってもかっこいい。地道な捜査と豊富な経験に基づくインスピレーションで犯人像に迫る渋い年配刑事とまだ緊張感は足りないものの若さ炸裂の行動力で最後は重要な役割を演じる若手刑事の組み合わせ、これですよ。犯人がどうも強い意志を持ってこの哀れな犯行に及んでいると気付いたとき、動揺する若手を叱り飛ばして奮い立たせるシーンとか中々に胸が熱いもんがあります。
- 作者: 筒井哲也
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2005/08/25
- メディア: コミック
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