軍靴のバルツァー 1
のっけから「平和なんて所詮戦間期」という発言を作中のキャラがし始めて、これは軍靴の足音が聞こえてヤバい匂いが漂いはじめる。例のネタを狙ってつけたのかどうかは分からないけれど。それはともかくとして内容は、近世から近代くらいのヨーロッパを舞台にした軍事モノ。主人公はバリバリのエリート将校で戦績も充分な出世街道驀進中だったけれど、なぜか唐突に後進国の軍事教官に配置転換される。左遷というわけでもなし、ともかく勤めは果たすべしと、色々と後れまくりなお国事情に戸惑いつつも、教練を開始する。
技術が発達していくに従って戦争のやり方も発達していくわけですが、道具の進歩の過程が垣間見えるのが面白いところです。絵柄も表紙絵どおりに描き込みが中々に激しく、良く出来ております。登場する地名なんかは架空のものっぽいものの、火器や道具の名称などの固有名詞は実在のものであり、リアリティがあります。印象的なシーンとしては小銃がマスケットから後送式へと本格的に普及し始めた段階で、殺戮の桁がグンと上がるところですね。主人公の知略ともあいまってカッコいい見せ場です。
しかし、子どもに銃とか砲とか撃たせたりとか演習デスヨと言いながら罪人を射撃の的にしたりだとか一部の方面にはものすごくウケが悪そうな絵づらが満載ですが、その辺はどっちかというと副菜なんですよね。エリートのはずの主人公がワザワザ教育任務を与えられるのにはやはり理由があり、進駐許可のみならず属国化の思惑があるのが読み進めていくと次第に明らかになっていく。後進国側にもそれに気付いてなんとかしようともがいてる人はいるものの、そうとはしらず善意で足を引っ張る方々もおられたりと、中々に泥臭い。弱い立場の国はむさぼられるという、あの位の弱肉強食な時代背景がよく描けてると思います。
1巻は、こういう雰囲気のマンガですよーんという準備砲撃みたいなもんであり、盛大に炎上していくのはこれからだと思われるので、今後の展開に期待です。
- 作者: 中島三千恒
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/07/08
- メディア: コミック
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