俺の妹がこんなに可愛いわけがない

隠れオタで未成年にも関わらずエロゲオタという、かの国では極めて危険な属性の持ち主の生態を描いたラノベ。それだけだとタダの近寄りがたいヤバイ人なんだが、ではそれが妹ならば? となれば一瞬で許せるから不思議である。最も、これはこの作品の兄が言うようにリアルで妹がいないからこそ成せる業であろうが。

表紙絵がほとんどすべてを物語っているのだが、妹ヒロインこと桐乃のすさまじいツンツン具合が見所である。思春期特有の思いあがりであるとか無駄に兄弟に対して反抗してみちゃったりとか、オタ趣味は世間様にばれたくはないけれども誰か理解してくれる人が欲しいであるとか、中々にウザカワイイ。リアルでいたらぶん殴りたいという感想を抱く人種もいるにはいそうだが、そこは女子中学生という設定なのでほどよく弱弱しいシーンもあれば、必要な分は自分で稼ぐというバイタリティもあったりと、起伏があるので世の中の大きなおにいちゃん諸氏諸君の許容水準メーターは高めで推移するんではなかろうか。

斯様に一巻ではツンデレで言うところのツン9割で展開し、最後の最後でほんのちょっぴり欠片ほどの慈愛を見せる。妹のためにあれやこれやと世話を焼いて体も張ってと八面六臂の活躍を繰り広げた兄もこれで報われ……てればいいのだけど。ラストになってようやく、タイトルの微妙なニュアンスを含んだ言い回しになるほど、と頷いたのでした。