花咲けるエリアルフォース

読み始めるとすぐに、不幸な生い立ちっぽい少年が不幸な出来事にまきこまれて、なんかよくわかんないうちにパイロットになる、という展開にやや辟易とした。どーしても、とある飛空士を意識せざるをえないような書き出しにやや食傷……したのも束の間でした。なにこれすごい、となるのにさほどの時間はかかりませんでした。飛空士シリーズとはマッタク異なる種類の奇妙な美しさに終始圧倒されっぱなし。読んでいて詰まることのない、流れるような文体。正体不明の読みやすさに促されるまま、途中休憩挟むことなく読み終えてしまいました。

お話的には、ある超兵器になぜか適正のあった主人公が戦争の中で仲間と共に空を駆け巡るとともに青春するもの。それと、主人公とその仲間たちを取り巻く世界環境も同時に描かれる。日本とは明言してないものの、どうみても日本で東西に分かれて内戦するという、ちょっと思想的に偏った方々には怒られそうな設定である。ただまぁ、ソレはあくまで添え物……なんだけど、添え物というにはちょっと語弊が感じる程度には描写が精密。あくまで架空の出来事とはいえ、さすがに自分らの住んでるとこが爆撃されるようなのを丹念に描かれるとグッと来ますよね? こない方には、スイマセン……

滅びの美しさと桜をひっかけるのは定番といえば定番なのだけど、その発想だけでここまで流麗な代物になるもんなんでしょうか。いやほんと、今まで経験したことのないタイプの文章だったんですよね。この面白さを上手く表現できる自信が無いのがはがゆいです。いやもーなんていうか、アレですよ。う、美しい...ハッ! という感想しかホントに出てこないです。

花咲けるエリアルフォース (ガガガ文庫)

花咲けるエリアルフォース (ガガガ文庫)