トリスタニア診療院繁盛記

トリスタニア診療院繁盛記 - Arcadia 完結済み

ロリババアという売り文句にまんまと釣られた感が否めないが、釣られても問題は特に無かった。シビアな局面が続く場面がちょくちょくあり、終盤はコレもしかしてかなり欝なエンド迎えるんじゃないのか、とヒヤヒヤさせられたものの、終わってみれば皆ハッピーと。読み終わってみれば意外にも心地よさが残る一作品でした。

オリジナル主人公の転生モノかつ原作知識有りなので、それなりに無双するのでそこは読む人を選ぶかもしれない。とはいえこういう手合いの作品に要求されるのは、原作で不憫になる展開をオリ主がいかにヒャッハーして原作ブレイクしていくかがミソなので、俺はあまり気にしない。最も、この作品に関して言えばオリ主が呼び出す使い魔のほうが余程バランスブレイクしてるので、どちらかというとそちらに嫌悪感覚える人が多そうな気もするが。作者的には使い魔の出典元がかなり悲惨だったので、ゼロ魔の二次創作やるついでに独自の救済イベントもコンタミさせた、ってところでもあるようですが、逆にそれが作者の趣味が露骨に晒される二次モノならではの良い味付けになってます。

オリ主である主人公(ヴィクトリア)の目的はマチルダとテファの関係性に介入するところにあります。俺は別段これらのキャラに思い入れはないんで、割とそのあたりの要素については流し読みしていたのだが……さすがにラストシーンはホロリときましたね。ヴィクトリアはなんのかんのいいつつアレコレ歴史に介入して二人の不幸な人生を救済すべく走り回るわけですが、転生者であるためゼロ魔の世界についてはどこか一歩引いた視点が抜けきらない。彼女は最後の方で色々あってやさぐれるんですが、救済すべきと考えていた二人によって逆に救われる、という諧謔がエクセレント。もうちょっと百合百合んしてもよかったかな、というのは作者と同感ではありますが、充分な水準に達していると思います。

原作が執筆段階では未完の状態で二次創作をやるのはちゃぶ台がひっくり返るリスクがあるわけですが、本文中にリスクテイクをある程度匂わせつつ、完結させる手腕はお見事の一言でしょう。読者からすれば、二次モノとはいえやっぱり最後まで読みたいのが心情ですから。作者あとがきに原作が完結次第、続きを書きたい的なことも書かれていたのでそこに期待です。