All You Need Is Kill

読み終わってからなんとなく著者名を見て驚いた。著者の桜坂洋氏というのは『よくわかる現代魔法』が代表作だが、若干失礼な表現になるが、あの現代魔法を書いた人がこういうのを書けるとはマッタク予想外だった。俺の現代魔法に対する印象は、世界観やキャラクターは良く出来ている……が、個々の部分にどうにも描写不足やちぐはぐな箇所が目立ち、小説全体として評価しようとするとまとまりのなさが気になりすぎて残念ながら高い点はつけられない、というものだった。なので、一巻単独でここまで小奇麗にまとめて完成度の高い本を書けることに驚かされたのです。

この本はタイトル通り、ペーペーの新兵に過ぎなかったひとりの少年が長い長い殺戮の旅を繰り返すお話である。彼はとある理由により、延々と同じ一日を繰り返すことになるのだが、死んで強くなり死んで強くなり、とまるで、死んで覚える類のテレビゲームでもやるかのように、淡々と孤独に強くなっていく。勿論、やがてはその戦いのループの日々にも終わりが来るのだが……

あのラストはどちらかといえばバッドエンドを彷彿とさせる、寂寥感が半端なく漂う幕の引き方だった。もうちょっとどうにかならなかったのか、と歯がゆくもあるが、あの結末しかありえなかったのだ、と納得せざるをえない作りだったのも確かである。

All You Need Is Kill (スーパーダッシュ文庫)

All You Need Is Kill (スーパーダッシュ文庫)