とある飛空士への恋歌
ふと気がつけば、なんだかんだでハッピーエンドで大団円を迎えてしてるじゃん、という感想がとりあえず出てきた。色々あったけれどもめでたしめでたしで終わりましよ的な。終わってみれば、義憤と初恋に燃える王子さまが悪の賊にかっさらわれたお姫さまを救い出す物語、という実に単純な構図に落ち着いたので、よくよく振り返ってみれば王道パターンで上手くまとまったシリーズに落ち着きました。どうでもいいけど、表紙絵が、眩い光を発するエロゲショップに入店する勇者のネタ画像に見えて仕方が無かったのはきつかった。
思えば、主要メンバに一部死亡確認されたキャラが出たときはどうなるんじゃコレと悲壮感漂いまくりなこともあったし、ヘタレ王子のカルエル君もちゃんとパイロットとして成長したついでに王子(笑)から王子(キリッにレベルアップしたし、サブキャラたちもほとんどは落ち着くところに落ち着いたし、アリエルはメインヒロインが別にいるケースの義妹ポジションの宿命としてしっかり初恋フラグを散らし、空の一族との外交はあーだこーだとアレコレやりあった挙句の果てに砲艦外交で決着したし、空の果ては公園の噴水だったり……フラグと伏線を回収しつつ、適当なオチをつけてうまいことラストシーンを一巻かけて演出されました。太平洋戦争とレシプロ機のロマンの香りをほのかに漂うドンパチをやったけれども、柱となるストーリーは少年少女による超青臭いラブストーリーでした、となるあたりに筆者の高い力量が伺えます。
この巻の見所は、謎キャラだったイグナシオがいかんなくその才能を発揮したところでしょうか。普段はイヤミな態度を露骨に見せるくせに、肝心なところでは寛容な姿勢を示したり主人公を引き立てるためのカッコイイ台詞を言ってみたりとか、地味にカッコイイ。カルエルに「クレアのことはまかせろり!(意訳)」とか、これエロゲならNTR展開ありえるでぇ、とつい思わずには居られない台詞も、なんだかんだいって様になってるのがカッコイイ。ツンデレだもんね、仕方ないね。
それにしても世界の構造ネタバレをここで使い切っちゃうのが少し驚いた。カルエルを成長させる切欠としてイスラとの決別はなんらかの形でやらないといけなかったんだろうけど、ああいう形で出してくるとはちょっと思わなかった。次のシリーズ出す時困らないですかね、と思わないでもなかったけど、既に次シリーズでてるから特に問題なかったということなんでしょうね。
なんにせよすごく良い形で完結したので、次回作である夜想曲シリーズもたのしみです。
- 作者: 犬村小六,森沢晴行
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/01/18
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