ペイルライダー

これ、かなりの悪食でないとたのしめない気がするんですが……一応、ラノベってのは建前として健全な青少年向けコンテンツという位置づけなので、こういうダークくさいのって出ないもんだと思ってたのだけれど。まぁ表紙絵も明らかに他ラインナップと比べると狂ってるしオビの煽り文句である「青春破壊小説」からしてキワモノ臭が抜群であり、世ほどの好きモノでない限り買わないだろうからいいってことなんだろうか。しかしまかり間違ってこんなものを若い時に読んだらトラウマもんといいいますか、このブルーの文庫もうぜってぇかわねぇ! とかになりそうなもんだけど。まぁ、ガガガ文庫だしこのくらいの無茶な作品が出てくるのは織り込み済みってことなんでしょうか。

おおかたのラノベというものは本来の読者層である中学生とか高校生くらいの登場人物が熱血であれファンタジー世界に召還されちゃったりであれ、ラブコメしたり冒険したりそれなりに物語をこなしていくわけですが、もう一歩踏み込んで人間関係に焦点をあてる場合は腐った人格の持ち主が少しずつまともになって過程を楽しめるのがラノベの一種の様式美であるわけです。がしかし、この本そういうの一切無いんですよね。カテゴリとしては、いわゆる王道に対するアンチな位置づけであり、良くある学園ラブコメパターンなんてクソくらえだぁぁぁというニッチ需要に対する供給なのでしょう。

主人公はクソ映画を好んで借りてきてはこれはクソ映画と言うような心象の持ち主で、この小説は鬱屈した人間のひん曲がった性根がただひたすら延々と描写されるというおぞましいものだったりします。本来の意味での誰得コンテンツなわけですな。過去にこのテの体験がある人はトラウマを彷彿とさせ、リアルタイムで進行中の場合は逃避先のハズの創作世界までもが残念なイヤリアルでしたよという地雷であり、そういう経験が無い方にとっては嫌悪感しか出てこない、という素晴らしい作品でありました。主人公と同じように、キワモノをキワモノとして楽しめる心性であれば面白いと感じられるんじゃないでしょうか、としか言いようの無い一冊でした。

あと、映画の引用が多いようなので、タクサン映画見てる人は元ネタが楽しめるのかもしれない。とはいえ、この本にひっかかるような層が西部劇なんて知ってる可能性とかどんだけよって話でもあります。

ペイルライダー (ガガガ文庫)

ペイルライダー (ガガガ文庫)