問題児たちが異世界から来るそうですよ? あら、魔王襲来のお知らせ?

前の巻の内容を踏まえると、次は飛鳥回かなぁという予測はなんとなく立てられます。推測できるだけに読者の期待を後回しする、つまりネタをもっと後ろの巻に持っていくことはアリっちゃアリです。しかし、容赦無く手札を切ってきてくれて割と満足してます。安易な引き伸ばしに屈することなく、いま出せるカードをすべて放出して、読者を魅了させようという筆者の胆力に敬意を表さざるを得ない。確かに、色々ぶっこみすぎて荒っぽくなり若干イミフな箇所な場所やもうちょっと丁寧な書きこみが欲しかったところが無い訳ではない。ただ、俺はそういう細かい粗よりこのてんこ盛りっぷりが実に楽しめました。
とはいえ、ちょっとこの巻には不満がある。飛鳥を前面に出すのがメインの筈なんだが、イマイチ彼女が活躍できてないといいますか。割と気に入ってるキャラだったこともあるんだろうけど、ディーンの屈服とか省略してほしくなかったなー、みたいな。まぁあのシーンは飛鳥の捲土重来のためには省くのが筋ではあるし、トドメファイナルは飛鳥だったから充分に活躍してるっちゃしてるんだけど。なぜか物足りなさがある。飛鳥の苦悩とコンプレックスの由来や源泉は前半でしっかりとあるのに、克服の過程が駆け足気味だからなのかなぁ。

というか十六夜がマジチート最強系主人公過ぎて他キャラの出番食い潰してるんですよね。いやまぁ、それはそれで、やだかっこいいというヤツで面白いんだけど。結局オイシイとこ全部お前がもってくのかよ! という破天荒っぷりが十六夜の魅力なのですが。しかもただ純粋に単に壊れキャラってわけでもなく、やたら豊富な知識量に妙に鋭い頭の回転力と義理人情を重んじる夢と漢のロマン大盛りで文句言う気も失せるほど格好よすぎるから困る。しかも、博識なのにも何か理由があってそうなってるぽいミステリアスさもあり。伏線の仕込み方も完璧。

伝承や伝説が力を持つ、というのはどっかの願望機を争奪合戦を彷彿とさせる設定であります。人の形を取らせてゲームの体裁を取らせるために、ある種の擬人化で乗り切ってるアイデアが良いですね。ただ、何かこう、作為的な世界観の匂いがします。神々の暇を持て余した遊びって感じらしいんですが、それにしては色々と仕込まれ過ぎというか。箱庭の謎みたいなのもその内シリーズが進めば明らかにされていくんでしょうかね。

とまぁ深読みや曲がった見方の出来るラノベではあるんですが、やはりそちらは本筋の楽しみ方ではないかな。白夜叉の熱きパンチラ談義やセクハラとか、黒うさぎとの鬼ごっこ、飛鳥精霊幼女を愛でる、十六夜と黒ウサギ決戦を前に覚悟を語る、などなど。細かいことはとりあえず脇に置いて各キャラそれぞれの突き抜けた言動を字面そのまんま受けとめてテンション上げるのが、この本の一番良い楽しみ方でしょう。

次は耀の巻ですね。強者ゆえの孤独をコミュニティがどう潤すか。そのあたりが楽しみです。