問題児たちが異世界から来るそうですよ? そう……巨龍召喚

前の巻までの内容と表紙絵を鑑みるに耀の回ですよね、とほのかな期待をコナゴナに打ち砕くまでの十六夜の活躍でやっぱり占められるのがこのシリーズの通例なのだろうか。初っ端から豪腕ながらもスマートな勝利をもぎとってきて他二人を圧倒するし、この巻を通じて描かれるのは十六夜の過去でして、昔話では多少おセンチなシーンはありつつ暴力旋風キャラっぷりは相変わらずでありまして。

十六夜の回想において彼がやたらに博識な理由の一端が明かされるわけですが、なぜ詳しいのかと言われれば、神話や伝承の類を身を以って存在しないことを体験して回ったにいったからに他ならない、というのはシンプルながら力強い説得力があります。妙に実体験のこもった言い回しになっていたのは、言葉どおりの意味だったわけですね。そんな境遇を背負っているからこそ、箱庭に狂喜乱舞の日々を期待するのは致し方なく。人知を超えた規格外の力を十全に発揮してなお、余りある世界というのは、規格外すぎる力を持つが故に世界を持て余し気味だった十六夜にとってはベストフィットだったのでしょう。

とはいえ、それは出来すぎというか作為的すぎるといいますか。あまりにも十六夜にとって都合が良すぎる気がするんですよねぇ。ご都合主義はどんとこいではあるんですが、なんかこう、いかにも色々と隠された意図がありますよ、という筆致はそそられるものがある。この巻は過去の十六夜のギフトゲームもどきと現在の飛鳥と耀の宣誓無き無法のギフトゲームが二重に進行していくのだが、これがちょっとわかりにくかった。ぶっちゃけぐしゃぐしゃっとして読んでる最中は余り良い感想を抱けなかったのだけど、読み終わってみると以外と爽快感に加えて先が知りたい欲求が湧き上がってくるんだよなぁ。不思議だ。