ゴールデンタイム〈1〉春にしてブラックアウト

昨今はラノベが氾濫しているため、俺はまず一巻を読んで続きを読むかどうかの判定基準にしています。なので、多少の伏線は良しとするけどあまりにも壮大過ぎたり、一巻が単独でオチが付いてなかったりすると、評価点が落ちます。が、例外はシリーズを一つ完結してる作者の場合であり、青春爆発ラブコメであるとらドラ!でお馴染みの竹宮ゆゆこ氏なのでその辺は差っ引くわけですが、やっぱりフツウにおもしろいですね。今度は舞台を大学一年生のものに移し変えての物語なわけですが、思わず壁殴り級のエンターテイメントです。

大学一年生の入学直後から始まるお話なんですが、この時期ってなんだかんだいってあれこれ期待したり不安になったりと忙しない季節です。新学期特有の狂乱ぶりが本当に良く描けてるんですね。地方から上京した人間特有の孤独感であるとか、同類が見つかったときの安心感であるとか、些細なことにハイテンションになってみたりとか、逆に落ち込んでみたりとか、新歓だとかサークルだとかのお祭騒ぎだとか。まぁぶっちゃけそゆの経験しなかった俺としては、ああきっとそういうもんなんだろうなぁという共感はあれども二度と体験することのかなわない日常系ファンタジーなのですが。とはいえ、主に野郎どもの登場人物が微妙に青臭くて等身大を感じさせるところが大変に良く出来ており、うらやまけしからんコンテンツなのです。

この巻はまだストーリーはそれほど大きく動かず、登場人物とそれらの背後関係を軽く紹介が主だった内容。その中でもメインはヒロインであると思われる香子さん。彼女は容姿はバツグンなですが、ストーカー気味の核地雷。しかも執心相手が主人公の親友ポジションであるやなっさん。傍から見ればそこそこ微笑ましい感じですが、当事者にとれば恐ろしい執着を見せるわけで、しかもそれに無自覚。必然的にその中間に主人公が巻き込まれていくわけですが、うん、まぁ、頑張ってねって感じです。方向性はどうあれ完璧な女の子であろうと努力を惜しまなかった意識の高い香子さんですし、彼女に尽くせばきっといいことあるでしょう。

背後霊と化した俺、記憶喪失、お前の失われた記憶を知っている先輩などなどまだ本格的に使用されていないギミックも多数あり、今後の展開がたのしみなシリーズです。