機巧少女(マシンドール)は傷つかない
割と素直な作りのラノベで俺にとっては好感触。暗い過去持ち主人公が、わけアリでおしゃべりな機械人形と共に蒸気の煙たなびく架空のロンドンに乗り込んで復讐劇を挑む。背後に流れるテーマはそれなりに重いものの、お約束的にツンデレお嬢様とラブコメしたり、主人に邪な好意を寄せるお供の機械人形が人外故のコミカルな嫉妬を見せたりと、テンションはゆるゆるなので余り頭を使わずに楽しめる。バトル描写もなかなか良い。凝ったことは何一つないのだけれど、するすると読めるように設計されているであろう点は評価が高いです。
機巧少女は傷つかない〈1〉 Facing "Cannibal Candy" (MF文庫J)
- 作者: 海冬レイジ,るろお
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2009/11/21
- メディア: 文庫
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魔法戦争
全体的にモッサリというか散漫な描写が目立ちイマイチ物語にのめり込めない中途半端どまりのラノベといったところ。ぶっちゃけつまらなかった。
なんといっても厳しいのはタイトルに戦争とありながら、ド派手なシーンが皆無なところ。主人公やヒロインが敵と思しき方々と戦闘する場面はあるんだけど、今ひとつチマチマしており爽快感が無いのが苦しい。また、設定がゴテゴテしてるのはいいとしても、バトルシーンが妙にややこしいのが辛い。現実世界では魔法は使ってはいけなくて、でもそれは原則論で魔法で強化した肉体ならオッケーで、魔法世界ではリミッターがないおかげで廃墟になってて、現実世界で魔法で撃たれると死んだり魔法使いになっちゃったりするから気を付けてね、とかなんとかがグシャアーと書かれており途中から良くわからなくなりました。
個々の戦闘が良く出来てれば全体感のおかしさも許容できるものなのだけど。保健室を脱出するためだけになんかすごそうな魔法が使われたりして、いや展開としては合ってるけど地味過ぎである。このテのもののお約束として主人公は秘められていたっぽい何かに覚醒するわけですが、普通は敵をなぎ払うとまではいかないまでもズブリと殺っちゃう必殺技を期待するのが人情というものですが、回避魔法て。いやまぁ回避でも別にいいんだけど、ネーミングぐらい主人公らしくもうちょっとスマートなものが良かったなぁ……
主人公の家庭が不穏なニュアンスを含むものだったり、現実世界のヒロインもこれまた癖のある属性持ちでありと、読み手を微妙な心情にさせる方々である。ソレは別にキャラ作りの一巻として良いんだけど、こうしたバックグラウンドが何がしかの能力の背景になるとかボスキャラを倒すカギになったりするんだと思うけど、別にそんなことはなく。果たしてこの欝設定は何のためだったのだろうかと。もしかして二人の能力が逃避願望チックなものとして顕現するのはそのせいなのか?
- 作者: スズキヒサシ,瑠奈璃亜
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2011/11/23
- メディア: 文庫
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さつきコンプレックス (1)
いわゆる男の娘萌え4コマである。
今となってはおじさんの昔はよかった的な話になってしまうんですが。こういう性倒錯な物語って、外見が女性であるのに精神は男性であるという乖離に葛藤したり、進歩的な表現が許される媒体でなら男性に襲撃される女の子のような男性という事態に発展したりとか、食い違っているが故に発生する何がしかの危機的状況とセットっていう意識なんですよね。不一致なことに起因する根深い精神描写をねちっこくやるのが定番といいますか。俺がエロゲからこの属性を獲得してるってだけの問題ですね、そうですね。
それはともかくとして、可愛くてこれはもうどう見ても女の子だけど実は男なんですよスミマセンね、だが男の娘ってだけでイける! という昨今の風潮は素晴らしいです。属性から記号に進化した感じ。
でまぁこの本では、主人公のお兄ちゃんがどうみても女の子であり、そんな彼女に謎のアプローチをしかけられるというところまではお約束。しかし、相手は男じゃないかいやいやそれ以前に兄弟じゃないか、と無駄に葛藤するのがギャグ漫画としての見せ所。当然そんなカワイイ子が近くにいれば接近してくる男が多いのだが、男が寄ってくることに困惑すべきか睨みを利かすべきかという辺りの変態的描写もソレナリに描けていてよろしいんじゃないでしょうか。
さつきコンプレックス (1) (まんがタイムKRコミックス)
- 作者: シュガー
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2012/03/27
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星刻の竜騎士(ドラグナー)
表紙絵から受ける印象そのまんまっていう意味で大変に良く出来ているラノベ。
ドラゴン乗りを養成する学校で可もなく不可もなくな主人公がいて、でも普通は皆持ってるはずのパートナーとなるドラゴンがいなかったけど何故か美少女の格好で振ってきて、ツンツンしてるお姫様ポジションに適当な因縁をつけられたりレースしたり、生徒会長もやっぱり美少女で理由はよくわからないなりにもそれなりの理屈でモテてしまったり、幼女ドラゴンとお姫様と生徒会長とで街をブラついてみたりしていると、ファンタジー世界特有の戦争背景が語られて火薬の匂いがくすぶり出すといよいよボスキャラが召還されてきて、ここは大一番を奮戦せねばと主人公の特殊スキルにパートナードラゴンの協力技が決まって世界は救われたわけではないけれども街にひと時の平穏が戻るのであった。
特にこれといってややこしい展開があるわけでもなく、物凄い緻密な心理描写があるわけでもなく。主人公がハーレムしてラッキースケベで俺がウヒエヘヘして何が悪いことがあるんだろうか。安直極まりない代物ですが、やはりこういうのは何も考えずに心を空にして頭を幸福感で満たせるのが素晴らしいです。
- 作者: 瑞智士記,〆鯖コハダ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/メディアファクトリー
- 発売日: 2010/06/23
- メディア: 文庫
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サイハテの聖衣
このラノベでは冒頭で主人公が外泊証明ではないけれどさぁこの書類にサインするんだと差し出されたソレにホイホイ署名しちゃったところ傭兵部隊に投げ込まれてしまうところから始まる。中東の外人部隊に放り込まれちゃった航空機パイロットを彷彿とする流れですが、悲劇的なのは最初の数ページだけ。あとはのんべんだらりとした美少女による日常ダラダラとほんのちょっとだけ戦闘してみちゃったりなんかする物語で構成されている。
異形生物が日本に侵攻してきて本土を蝕まれ、その異形生物から採取した謎テクノロジーで武装した美少女があざとし衣装とロマン武器で戦うという世界設定。これだけだと九州のあたりで学生が戦争するガンでパレードとか、世界を夢とか希望とかのお話で救わなければならないマヴでラブとか、そのあたりを連想しないこともないのだけれど、そんなシリアス要素はマッタクなく。戦況は下関まで押し込まれておりそこが日本のサイハテなのだという結構切迫してるものの、なんかヤバイじゃないんすか? というのはナシで、個性豊かな女の子四名が飛んだり跳ねたりウダウダしたり腕時計型麻酔銃で同僚を眠らせたりするだけの、百合プラス日常。
いやぁこういうのいいね、すばらしい。俺はこの著者の作品読むのタブン初めてなんだけど、刊行リスト見るとラノベがずらっと並んでる。この本読んでて、こなれてるなぁというのすごく感じたというか、ラノベの文法や暗黙的なお約束に忠実に作ってあってすごく読みやすい。ストーリーや描写の丁寧さが云々というより、テキトーに読んでもソレナリに気持ちよくなれるという方向性において、非常に良くできているラノベでした。
- 作者: 三雲岳斗,朱シオ
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2011/12/10
- メディア: 文庫
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魔法世界は女ばかりで、俺がパパ!?
なにもしていない(性的な意味で)にも関わらずどういうわけか自分の子どもが異世界で生まれているというかなりキワモノ臭が高い。突然の異界送りから始まり理不尽なラッキースケベがありハーレムがごく自然に達成されてしまう欲望の世界観に高まり見知らぬ幼女にパパ呼ばわりされるところまでは良かったのだが。ドタバタラブコメで終わるのは良しとするとしても、もうちょっと変態くさい方向性に走っても許されたんではなかろうか。中盤から終盤がフツーすぎて今ひとつ物足りなさを感じてしまったんですよねぇ。エロマンガ家が一般向けに様々な表現を開放かつセーブしながら描くときのようなギリギリさが求めていきたい。
- 作者: 鯨晴久,〆鯖コハダ
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2011/10/17
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優等生以上、フリョー未満な俺ら。
エロゲの導入部のようなヌルヌルの日常描写が一巻ずっと丸ごと続きそのまま終わるという実に中身の薄いラノベでした。
中身が薄いと書いたものの、それが即ち本書の価値が低いわけではない。特段にこれといった物語は無いのだが、キャラクター間のやり取りはそれなりに起伏があるため、のんべんだらりと読み進めていくぶんには程よい刺激である。
一応はハーレムものの要素ではありお約束として主人公が鈍感であり美少女モノ特有のかったるい展開がほとんどすべてである。しかし主人公のキャラ設定が不良を目指す優等生というギャップ萌えを狙い過ぎのあざといものであり、彼がクソ真面目な行動を取る度にそれって不良としてどうなのと突っ込まれ、いやだから俺は不良を目指してるのだオルァーという、ちがうって、いやちがわない、とちぐはぐな漫才に終始する。最も、彼を含めてこのラノベの他の登場人物たるヒロインや脇役の端役に至るまでひたすら与えられた記号的アクションしか取らないのだけども。
意外性とかそういうのはマッタク無いが、タイトルからしていかにもな匂いを漂わせる期待通りのペラペララブコメディという点では良く出来ていると思います。
- 作者: 初美陽一,さくらねこ
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2011/10/14
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